1970 年代に、韓国が「漢江の奇跡」と呼ばれる奇跡的な発展をしたのはなぜか? という点から始め、日本の挑戦併合時代、朝鮮半島史上初の朝鮮資本といわれる大規模企業「京城紡織株式会社」の発展と拡大、経営者である金一族が産業資本家として成功をおさめていく経緯について書かれた書。
- 「朝鮮半島を日本が併合しなければ、朝鮮民族自らが自力で産業を発展させたはずだ」という仮定の話に重点を置かない
(著者自身は、仮に併合がなかったとしても、半島は資本の蓄積が十分ではなく、手工業レベルはともかく、早期の工業化は難しという立場) - 歴史として実際に何が起きたのか?
- 起きたことに対して、一体どの様な要因が大きかったのか?
- あくまで日本は自国の利益を考えた結果であったとしても、軍部を始めとする日本の政策・資本投下が大きなプラスの影響を与えた
という論旨展開をし、一つ一つ実例を挙げながら、歴史的な流れを追っていく。
史家の名に相応しく、ここの主張に文献の裏付けがあり、論旨の展開も解り易い。
本書は 1 の仮定を信じている・信じたい朝鮮民族にとっては、非常に腹立たしい内容だろう。しかし、学術の面からは、先ず本書を読んだ上で反論すべきであり、これだけの書が、つまみ食い的な部分的な訳はあるものの、全文を訳した書が朝鮮半島で出版されていない点が本当に残念。