『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』(原題:CHARLIE WILSON'S WAR) を見てきたのですが、宣伝での紹介の仕方と映画における主人公のキャラクターが随分違います。快楽主義者である点は同じですが、決して御気楽議員ではありません。「何をすべきか?」ということは意識が無かったのかもしれませんが、非常にしたたかな人で、むしろ昼行灯を演じていた感さえあります。(実際の Wilson は、映画とは比べられないぐらいしたたかな狸親父なのでしょうが)
実際の内容は、ソヴィエト連邦のアフガニスタン侵攻に対して、一人のアメリカ下院議員のチャーリーが議会のチェックを受けづらい委員会よる予算配分を使って、裏舞台からアフガニスタン (実際にはゲリラ戦闘をしていたムジャヒディン) を支援するというものです。
映画の出来としては、人が心を入れ替えて成功を掴むといった娯楽作としては、Tom Hanks と Julia Roberts といった日本でも有名な役者を使っているのですが、失敗でしょう。理由は、有名どころを使っているのですが、委員会やアメリカ政治の仕組み、またムジャヒディンの一部は後にイスラム原理武装組織アルカイダの母体にもなった、マスード=現アフガニスタン政権の母体となった北部同盟のカリスマ司令官で 9.11 直前に暗殺された人物等々、ある程度の予備知識が必要なためです。無ければ状況が解らないまま映画を見終わってしまうでしょう。
そうかといって、ドラマ性のある人対人の物語をしては、先の二人と同じくアカデミー主演賞獲得者であるPhilip Seymour Hoffman も出演しているのですが、それぞれの人の感情的な好悪や、思想的な違いが描ききれず、中途半端なままです。また政治・社会にメッセージを与える作品としても、CIA や委員会の判断ミスについても、何を間違えたのかがはっきり示されていないので、結局アメリカの中東政策は 20 年間何を間違え、今後どうすべきか? も解らないままなので、メッセージ性があるようにも思えません。
そういえは、当時の映像と現在の映像の質が違いすぎるのも気になりました。少なくとも、戦闘の映像は当時の画質に合わせるなど、視聴者が違和感が起きないような配慮が必要でしょう。
そういうわけで 55 点。映画館まで行って見る価値は無し。DVD の詳細も、通常入館料より高くなるので、お勧めできません。まあレンタルで暇潰しぐらいにはなるでしょうか。