『偽りなき者』。誠に重い作品だ。
しかし、できるだけ多くの人に観て欲しい。重い作品なので、万人に勧められる訳ではないけれど。
鑑賞後の思いとしては、私はこの主人公のように強く、そして優しく嫋やかにいられるだろうか? いやいられないだろう。
粗筋は (ネタバレなので、隠している)
- 離婚と失業の試練を乗り越え、ようやく穏やかな日常を取り戻した幼稚園 (のおそらく補助) 教師の主人公
- それでも身近な仲間たちとは、深い信頼で結びついている
- そんな主人公を親友の娘 (園児) が子供心ながら恋をする
- しかし、主人公はどの子にも優しいので、嫉妬心を持ってしまう。
- もちろん親友も、主人公の言葉より、娘の言うことを信じる
- 更に年上の兄弟の話を聞いたことで、一種の耳歳馬になり、主人公に性的ないたずらをされたと、園長に嘘をついてしまう
- その結果、主人公は周りのものから変質者の変質者の烙印を押される
- こうなると、親友の娘が真実を話しても、「怖がらなくても良い」等と言われ、主人公の信頼回復には結びつかない
- よって無実を証明できる手立ては何もない
- 噂はあっという間に町中に広がり、仕事も友人もも、信用も全て失った主人公は小さい町で孤立
- 店での購入も断られ、文字通りたたき出される状況
- 憎悪と敵意がますますエスカレートし、一人息子にまで危害が及び、飼い犬まで殺される
- クリスマスが訪れ、主人公は誰もから蔑みの目を向けられることを承知で、教会のミサに行き、親友を慟哭しつつ「私が何をしたんだ」と問い詰める
- これは機に親友はその日の夜中に家族には内緒で主人公を訪れ一応の関係修復
- やがて裁判が開かれ、無罪評決がでて、毎年恒例の狩猟の会が開かれるが、その時主人公は何者かに狙われる
- 主人公を疑い続けている何者かが未だに存在する。それが大っぴらではないにしても
粗筋としては、他の作品でもある。しかし主人公の演技が素晴らしい。迫害の発端を開いた親友の娘のことは、全く恨んでもいない。また迫害に対して、毅然と抵抗はするけれど、その人々を恨んでもいない。
まるで『雨ニモマケズ』のような主人公。