言わずと知れたジブリ最新作。監督の宮崎駿さんは、この『風立ちぬ』で長編作品からの引退を表明しています。
しかし、最初に断っておくと、私はこの作品に期待して観に行ったわけではなく、ある意味、文句を言うとしても、観なければ始まらない、と。
粗筋は、戦前の艦上零式戦闘機、いわゆるゼロ戦の主任設計者堀越次郎の物語。しかし話のメインは、戦争やゼロ戦設計ではなく恋愛劇とみるべきだろう。
結果としては、なんだかんだと注文をつけても、宮崎駿は凄い、と思う反面、作品全体としては、残念ながら予想通り。
- ジブリとしては『おもいでぽろぽろ』以来、宮崎駿監督としては、おそらく初であろう大人の恋愛劇に、この歳で挑戦している
- 画字体は相変わらず素晴らしい
何より、人・物の動きが本当に自然 - 反面、動きにかつてのような躍動感が無い
同じ飛行機を扱っているのに、『ナウシカ』のメーべ、実在の機体としては、『紅の豚』のマルコとカーチスの一騎打ちのような疾走間がどこにも無い - 所々、話・時代が飛び、ストーリとして破綻している
私個人は、予備知識があるので、あの時代か、と直ぐに解るが、多くの観客は解るのだろうか? 少なくとも子供は無理だろう。(大人の恋愛劇なので、そもそも子供を対象にしていないのかもしれないが) - 主題が恋愛だったとしても、そして堀越が創りたかったのは、あくまで美しい飛行機であって、戦闘機ではなかったとしても、その半生を語る上で、ゼロ戦は避けて通れない以上、戦争をきちんと描くべき
幼いころから宮崎作品に触れているので、厳しくなる面があるかもしれないが、最後の作品がこれというのは、本当に残念。
反面、例え復帰しても、かつてのような輝きのある作品はもう作れないだろうとも感じる。『千と千尋の神隠し』は既にピークを超えており、これも含めてずっと作品の質は下り坂との印象を持つ。